ゴン太くんの鳴き声「ふごふご」の正体とは?カズーの仕組みと誕生秘話
NHK教育テレビ(現・Eテレ)の伝説的造形番組『できるかな』で、長年にわたり子どもたちを魅了し続けた人気キャラクター「ゴン太くん」。黄色い帽子に茶色いモフモフの体、そして工作で行き詰まったときや大好物の焼き芋を前にしたときに見せる愛らしいリアクションは、昭和・平成・令和の世代を超えて記憶され続けています。
なかでも視聴者の記憶に強く刻まれているのが、感情豊かに発せられる「ふごふご」「ンゴンゴ」という独特の鳴き声です。「あれは声優が口で出していたのか」「特殊な電子音加工だったのか」とネット上でも長年議論が交わされてきましたが、その音の正体は声優による演技ではなく、あるアナログな民俗楽器を用いた生演奏でした。本稿では、当時の番組制作に関わった関係者の証言や手記、残されたアーカイブ記録を徹底検証し、あの鳴き声が生まれた構造的背景と誕生秘話に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ゴン太くんの鳴き声「ふごふご」の正体は声優ではなく、管楽器「カズー(Kazoo)」を口にくわえてハミングした生音である。
- 要点2:鳴き声を演奏していたのは声優ではなく、番組の構成作家であり作詞家としても高名な井出隆夫氏である。
- 要点3:言葉を持たない「ノンバーバル(非言語)演出」がノッポさんのパントマイムと融合し、半世紀を超えて愛される教育番組の金字塔を築き上げた。
【噂の真相】ゴン太くんの鳴き声は声優ではない?「ふごふご音」を生んだ楽器の正体
ネット上のコミュニティやSNSで定期的に話題となる「ゴン太くんの声優は誰なのか」という疑問。結論から言えば、クレジット上に「ゴン太くんの声」を担当する声優は存在しませんでした。あの独特の濁った、どこかユーモラスで温かみのある音の正体は、膜鳴(まくめい)楽器の一種である「カズー(Kazoo)」です。
カズーは金属製やプラスチック製の筒の側面に薄い膜(振動板)が張られたシンプルな楽器で、演奏者が口にくわえて声を出すと、声帯の振動が膜に共鳴して特有の「ブー」「ふごー」というバズ音を生み出します。ゴン太くんの鳴き声は、スタジオの片隅でマイクの前に立ち、カズーをくわえた人物が画面の動きに合わせてリアルタイムで感情を吹き込んでいたものです。
そして、このカズーを演奏してゴン太くんに命を吹き込んでいた人物こそ、番組のメイン構成作家を務めていた井出隆夫(いで・たかお)氏でした。井出氏は後に『おかあさんといっしょ』の歴史的人気人形劇『にこにこ、ぷん』の原作・脚本を手掛け、童謡「北風小僧の寒太郎」の作詞(筆名・井出隆夫)などでも知られる児童文化界の巨匠です。声優を専門職として起用するのではなく、番組の脚本とキャラクターの心情を誰よりも理解している構成作家自らが現場で息を吹き込むという、きわめて独創的な制作手法が採られていました。

【音の仕組みと再現】自宅で作れる!ゴン太くんの鳴き声の原理と手作りカズーの作り方
カズーの発音原理は非常にシンプルでありながら、人間の発声ニュアンスをそのまま増幅・変形させる優れた表現力を持ちます。通常の笛のように「息を吹き込む」だけでは音は鳴らず、「声(ハミング)を通す」ことによって初めて膜が共鳴する仕組みです。
ゴン太くんの「ふごふご」という音を再現するには、カズーをくわえながら「ふごふご」「うごうご」と低めの喉声でイントネーションをつけて発声するのがコツです。息の強弱や母音の開閉を調整することで、喜び、怒り、困惑、甘えといった複雑な感情表現が可能になります。
実はこの音響構造は、身の回りにある日用品を使って家庭でも簡単に再現することができます。『できるかな』の工作精神を受け継ぐ、手作りカズーの制作手順は以下の通りです。
【手作りカズーの制作ステップ】
1. 材料の準備:トイレットペーパーの芯(またはラップの芯)、クッキングシート(またはトレーシングペーパー、薄いビニール)、輪ゴムを用意します。
2. 空気穴の加工:紙管の中央あたりに、キリやハサミの先で直径5〜8ミリ程度の小さな穴を1箇所開けます。
3. 膜の固定:紙管の片方の端にクッキングシートをかぶせ、ピンと張った状態で輪ゴムを使ってしっかりと固定します。
4. 発声の検証:開いている側の口から「トゥー」「フー」「ふごー」と声を入れます。中央の穴を指で軽く塞いだり開けたりすることで、音色の変化を楽しめます。
【徹底比較】『できるかな』の演出構造とキャラクター表現の変遷データ
『できるかな』が1970年の放送開始から1990年の最終回に至るまで、20年間にわたり子ども向け工作番組の頂点に君臨し続けた背景には、緻密に計算された演出構造が存在します。番組の変遷と音響・演技の役割分担を整理したのが以下のデータです。
| 項目 | 詳細・事実データ | 当時の一般的な子ども番組基準 | 編集部の分析・評価 |
|---|---|---|---|
| 放送期間と総回数 | 1970年4月〜1990年3月(約20年間・全794回) | 改編期ごとに1〜3年で交代する枠が主流 | 単一のコンビで20年継続は極めて異例の金字塔 |
| 出演者の役割 | ノッポさん(高見のっぽ)、ゴン太くん(操演:井端信之) | 歌のお兄さん・お姉さん+着ぐるみ声優 | パントマイム俳優と職人技操演による純視覚的コンビ |
| 音声表現の構成 | つかせのりこ氏のナレーション+井出隆夫氏のカズー演奏 | 劇団所属声優による台詞劇と会話劇 | 台詞を排し、効果音と客観的ナレーションのみで世界を構築 |
| ゴン太くんの内部構造 | 視界が極めて限定的な大型着ぐるみ(重量約10kg以上) | 覗き穴を大きくとった視界優先の着ぐるみ | 視界不良の中でノッポさんと息を合わせた超人的身体感覚 |
【誕生秘話と現場の証言】なぜ言葉を話さない設定になったのか?NHK教育の挑戦
『できるかな』の前身番組は、1967年から放送されていた『なにしてあそぼう』でした。この番組でノッポさんこと高見のっぽ(本名・高見映)さんはすでに「一言も喋らずに身振り手振りとパントマイムだけで工作の楽しさを伝える青年」という画期的なキャラクターを確立していました。
1970年の番組リニューアルに伴い、「子どもたちの等身大のリアクションや失敗を代弁する相棒」として生み出されたのがゴン太くんでした。しかし、主役であるノッポさんが言葉を発しないサイレント表現を徹底している以上、隣にいるゴン太くんだけが流暢に日本語を喋り出してしまっては、番組が持つ静謐で想像力を刺激する独特の空間美が崩壊してしまいます。
そこで考案されたのが、「言葉は話さないが、感情がダイレクトに伝わる独特の擬音」でした。当時の特番インタビューや回想録において井出隆夫氏は、海外のジャズやフォークミュージックで用いられていた玩具的楽器「カズー」に着目し、これを鳴き声としてスタジオで即興的に鳴らすアイデアを提案したと明かしています。
さらに、ゴン太くんのスーツアクターを務めた井端信之(いばた・のぶゆき)氏の卓越した身体表現がこれに重なりました。着ぐるみ内部からは外がほとんど見えない過酷な構造の中、ノッポさんの指先の動きや息遣いを気配で察知し、首の傾きや全身の震えで感情を表現。そこに井出氏のカズー演奏がリアルタイムでシンクロすることで、あたかもゴン太くん自身が生命を持って呼吸し、唸っているかのような奇跡的なリアリティが完成したのです。
【実態検証】ネット上の誤解と「クイーカ説」の真相|半世紀愛される音響の魔術
ネット上のQ&Aサイトや一部のブログ記事では、長年にわたり「ゴン太くんの鳴き声はサンバで使われる打楽器『クイーカ(Cuíca)』ではないか」という誤情報が散見されてきました。クイーカとは、太鼓の内側に取り付けられた竹ひごを濡れた布で擦ることで「キュッキュッ」「ブーブー」と動物の鳴き声のような高い音を出すブラジルの民族楽器です。
なぜこのような混同が起きたのかを検証すると、以下の理由が浮き彫りになります。
- 音響的質感の類似性:クイーカの擦過音とカズーの膜振動音は、どちらも倍音を多く含む濁ったユーモラスな音であり、音楽に詳しくない視聴者が聴覚的に混同しやすかった点。
- 当時の教育番組のBGM:1970年代〜80年代のNHK教育番組ではラテンパーカッションが多用されており、BGMとしてのクイーカ音とゴン太くんの効果音が記憶の中で混ざり合った点。
しかし、当時の制作台帳やNHKアーカイブスの関係者証言により、使用されていたのは100%「カズー」であることが確定しています。カズーであったからこそ、演奏者の口元のニュアンス(息遣いや微妙な声色の変化)がそのまま音に反映され、機械音や打楽器では出せない「喜怒哀楽の豊かな揺らぎ」を生み出すことができたのです。
【プロの結論】昭和のノンバーバル演出が現代の教育・コミュニケーションに遺した価値
デジタル情報が過剰に溢れ、あらゆる説明が言語化・テキスト化される現代において、ノッポさんとゴン太くんが体現していた「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」の価値は、メディア心理学や教育学の観点からも極めて高く再評価されています。
言葉による説明を極限まで削ぎ落とし、手の動き、道具の擦れる音、そして「ふごふご」というプリミティブな感情音だけで構成された画面は、視聴者である子どもの「能動的な観察力」と「文脈を補完する想像力」を最大限に引き出していました。ノッポさんがハサミを入れる瞬間の緊張感や、ゴン太くんが完成品を見て跳びはねるカズーの歓声は、理屈を超えて子どもの直感に働きかける教育的配慮の結晶でした。
【昭和の演出アプローチと現代STEAM教育の親和性】
・推奨される向き合い方:幼児教育やものづくりにおいて、完成形や手順を言葉で指示しすぎず、「動作を見て真似る」「音や手触りで素材の性質を感じ取る」という感覚的アプローチを重視する家庭・指導現場。
・慎重になるべきケース:すべてを最短ルートで効率化・言語化し、正解のレシピだけを子どもに与えようとする過度なファスト学習志向。
2022年9月に高見のっぽさんが逝去された際、多くの大人たちが涙したのは、彼らが画面を通じて「言葉を超えた無償の信頼と創造の喜び」を全身で受け取っていた証左に他なりません。
【できるかな ゴン太くん 鳴き声】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ゴン太くんの鳴き声はあらかじめ録音されたテープだったのですか?
A1:いいえ、原則として収録スタジオで構成作家の井出隆夫氏が画面の動きを見ながらリアルタイムでカズーを吹いて生あてしていました。そのため、ゴン太くんの突発的なリアクションやハプニングに対しても、完璧に感情が乗ったアドリブの鳴き声が付けられていました。
Q2:ノッポさんは最終回以外、本当に一度も喋らなかったのですか?
A2:20年間のレギュラー放送中、ノッポさんは一度も声を発しませんでした。1990年3月6日の最終回「つみき」のラストシーンで、初めてカメラに向かって「あーあ、喋っちゃった。今日はこれまで!」と穏やかな声で語りかけた瞬間は、日本のテレビ史に残る伝説の名場面として語り継がれています。
Q3:ゴン太くんの着ぐるみや実物は現在どうなっていますか?
A3:番組終了後もゴン太くんはNHKの貴重な歴史的資産として大切に保管されており、NHK放送博物館などの企画展や関連特番などで度々その姿を見せています。また、デジタルアーカイブや公式グッズを通じて、現代の子どもたちやかつての視聴者に親しまれ続けています。
まとめ:時代を超えて響く「ふごふご」の記憶と創造性の原点
ゴン太くんの鳴き声「ふごふご」は、単なるコミカルな効果音ではなく、構成作家・井出隆夫氏の音楽的センス、スーツアクター・井端信之氏の職人技、そしてノッポさんこと高見のっぽさんのパントマイム哲学が結実した、昭和テレビ史における最高峰の音響演出でした。
身近な楽器カズーひとつでキャラクターに命を吹き込み、言葉がなくても心を通わせることができた『できるかな』の世界。身の回りの素材を工夫して新しい価値を生み出すその精神は、時代が変わっても色あせることなく、私たちに「工夫することの楽しさ」を語りかけ続けています。 (出典: できるかな ゴン太くん 鳴き声(Yahoo!ニュース))