裁判員の日給はいくら?最高1万円の手当基準と給与二重取りの実態
ある日突然、自宅の郵便受けに届く最高裁判所からの親展封書。封を開いて「裁判員候補者名簿に登録されました」という通知を目にした瞬間、多くの人が真っ先に抱く疑問が「仕事を休んだら給料はどうなるのか」「日当はいくら支払われるのか」という金銭面や拘束時間への不安です。
2009年にスタートした裁判員制度ですが、2026年現在も選任プロセスや手当の支給基準、税務上の取り扱いについては誤解が少なくありません。本記事では、最高裁判所の最新規定や労働法規、実際の裁判員経験者の証言をもとに、日当の計算ロジックから会社の給与との兼ね合い、正当な辞退理由まで余すところなく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:裁判員の日給(日当)は拘束時間に応じて最高1日1万円、選任手続のみの候補者は最高8,000円が実費交通費とともに支給される。
- 要点2:会社の給与(特別有給休暇など)と裁判所の日当を同時に受け取る「二重取り」は法的に完全な合法であり、副業禁止規定にも抵触しない。
- 要点3:日当は税務上「雑所得」に分類され、給与所得者で年間20万円を超える副収入・雑所得が生じない限り原則として確定申告は不要。
【2026年最新】裁判員の日給・手当相場と最高1万円の支給基準
裁判員や補充裁判員、あるいは候補者として裁判所に出頭した場合、国から「日当」および「旅費(交通費)」「宿泊料」が支給されます。これは労働の対価である賃金ではなく、公の職務を担当したことに対する謝礼および実費弁償という法的位置づけを持っています。
最高裁判所が定める「裁判員の参加する刑事裁判に関する規則」に基づき、支給額は拘束時間帯によって細かく定められています。
| 区分・対象者 | 日当の支給上限額 | 拘束時間・算定基準 | 交通費・宿泊料の支給 |
|---|---|---|---|
| 裁判員・補充裁判員 | 1日あたり最高10,000円以内 | 開廷から閉廷・評議終了までの実拘束時間(午前のみ等の場合は減額) | 最も経済的な通常経路の往復交通費を全額実費支給。遠方の場合は規定の宿泊料あり |
| 裁判員候補者(選任手続) | 1日あたり最高8,000円以内 | 選任手続の所要時間(午前または午後のみなら概ね2,000〜4,000円程度) | 出頭当日の往復交通費を実費支給(不選任となった場合も必ず支給) |
具体的な日当の決定は、裁判所ごとに定められた時間区分に準拠します。例えば、朝から夕方まで丸1日審理や評議が行われた場合は上限の1万円が支給され、午前中のみで終了した半日審理の場合は約5,000円前後、選任手続で2〜3時間程度の拘束であれば約3,000円〜4,000円程度が目安となります。
また、交通費(旅費)は自宅最寄り駅から裁判所までの鉄道運賃やバス代が最も合理的な経路で計算されて支払われます。遠隔地や離島からの呼び出しで当日移動が困難な場合には、国家公務員の旅費規程に準じた宿泊料が支給される仕組みが整っています。

会社の給料と日当の「二重取り」は違法?有給休暇と就業規則の真実
会社員が裁判員に選ばれた際、最も頻繁に議論されるのが「会社を休んでいる間の給料」と「裁判所から支給される日当」の重複受給、いわゆる二重取り問題です。
労働基準法第7条が保障する「公民権行使の時間」
大前提として、労働基準法第7条では「労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、使用者は、拒んではならない」と定めています。裁判員の職務はまさにこの「公の職務」に該当するため、企業側が参加を拒否したり、参加を理由に解雇や減給などの不利益な扱いをすることは違法です。
有給か無給かは企業の就業規則次第
ただし、労働基準法は休暇を与えることを義務付けているものの、その期間を有給とするか無給とするかは各企業の就業規則に委ねられています。主な対応パターンは以下の3つに分かれます。
- 特別休暇(有給):大手企業や公務員組織を中心に導入。裁判員休暇として有給扱いになり、会社の基本給も満額支給される。
- 通常の有給休暇の充当:社員自身の年次有給休暇を消化して参加する形式。
- 特別休暇(無給):欠勤扱いにはならないが、裁判に参加した日数は給与が日割りで控除される形式。
ここで「会社の有給給与を受け取りながら、裁判所から日当1万円を受け取ると不正利得になるのではないか?」という疑問が生じますが、結論から言えば法的な問題は一切ありません。裁判所の日当は実費弁償・謝礼の性格を持ち、公務の遂行に対して支払われるものであるため、会社の給与と同時に受け取っても法律上完全に有効です。また、公務への従事であるため、社内規定の副業・兼業禁止条項に抵触することもありません。
裁判員手当と確定申告|雑所得の計算ルールと税務上の落とし穴
手当を受け取った後に気になるのが税金の手続きです。裁判所から支払われる日当は非課税ではなく、税法上の「雑所得」に区分されます。
給与所得者の「20万円ルール」
一般的な会社員や公務員など年末調整を受けている給与所得者の場合、給与所得および退職所得以外の所得(雑所得や副業収入など)の合計額が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告を行う義務はありません。
通常の裁判員裁判は平均3日〜5日間程度で結審するため、日当の総額は3万〜5万円程度に収まるケースが大半です。ほかに副収入(原稿料、アフィリエイト、暗号資産取引益など)がなければ、裁判員の日当だけで20万円を超えることはまずないため、確定申告は原則不要となります。
確定申告が必要となる例外ケース
ただし、以下の条件に該当する人は日当を含めた申告が必要になるため注意が必要です。
- 自営業・フリーランス:本業の事業所得と合わせて確定申告を行う際に、日当を雑所得(または事業関連収入)として計上する。
- 医療費控除やふるさと納税で確定申告をする人:還付申告等で確定申告書を税務署へ提出する場合、20万円以下の雑所得であってもすべて記載して申告しなければならない。
- 住民税の申告:所得税の確定申告が不要であっても、お住まいの自治体に対して住民税の申告義務が生じる場合がある(実務上は少額のため自治体判断によるケースも多い)。
なお、日当と一緒に支給される交通費(旅費実費)や宿泊料は非課税となるため、所得金額の計算に含める必要はありません。

【実態検証】辞退率7割超の現場リアルと「正当な辞退理由」の境界線
最高裁判所が公表している司法統計データを検証すると、裁判員候補者に選ばれた人のうち、実際に辞退を申し立てて認められた割合(辞退率)は毎年60〜70%前後で推移しています。制度発足当初と比べても辞退率は高止まりしており、現代の多忙な生活環境が浮き彫りになっています。
法律が認める正当な辞退理由(裁判員法第16条)
裁判員は国民の義務とされていますが、個人の生活や健康を著しく破壊してまで強制されるものではありません。法律上、以下のような明確な事由がある場合は辞退が認められます。
- 年齢基準:70歳以上の高齢者(希望すれば参加可能)。
- 学生:大学、大学院、高等学校などの正規学生・生徒。
- 健康・身体上の理由:重い病気、怪我、妊娠中、産前産後の期間中など。
- 家庭の事情:同居親族の介護、未就学児の育児、冠婚葬祭への出席が不可避である場合。
- 仕事上の重大な支障:「自分が従事しなければ事業に著しい損害が生じる」「重要な会議・納期・出張が重なっており代替要員がいない」など具体的な事業上の不利益が証明できる場合。
- 辞退の過去歴:過去5年以内に裁判員・補充裁判員を務めた経験がある、過去1年以内に選任手続期日に出頭したことがある場合。
無断欠席に対する罰則と実際の運用
「正当な理由がないのに出頭しない」「選任手続をボイコットした」という場合、裁判員法第112条に基づき「10万円以下の過料」という罰則規定が存在します。しかし、実際の司法現場において頭ごなしに過料が科されるケースは極めて稀です。裁判所は事前に郵送される「質問票」を通じて辞退希望や事情を丁寧にヒアリングしており、無理な呼び出しを避ける運用が徹底されています。
実際の経験者手記やアンケート調査では、「最初は拘束や精神的負担に強い抵抗感があったが、法廷で証拠を精査し、一般市民同士で真剣に議論した時間は人生観が変わるほど貴重な体験だった」と語る声が7割以上を占める一方、「凄惨な事件現場の写真を見続けるのが精神的に辛かった」「連日の審理で体力的・精神的に消耗した」という率直な負担感を訴える声も根強く存在します。
一般に知られていない盲点と守秘義務|話していいこと・ダメなこと
裁判員を務める上で最も厳格に管理されているのが「守秘義務」です。これに違反した場合、裁判員法第108条により6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、この義務は裁判終了後も一生涯続きます。
しかし、ネット上では「裁判員をやったこと自体を口にしてはいけない」「日当の金額も秘密なのか」といった誤った噂が散見されます。境界線を正確に整理しておく必要があります。
口外して良いこと(違反にならない行為)
- 自分が裁判員(または候補者)に選任されたという事実。
- 公開の法廷で審理された証拠や被告人・証人の発言内容(傍聴人が聞けた内容)。
- 裁判所から支給された日当の金額や交通費の計算方法。
- 法廷や評議室の一般的な雰囲気、裁判員を経験して得た自身の感想や教訓。
絶対に口外してはいけないこと(守秘義務違反)
- 評議の経過と詳細:評議室の中で誰がどのような意見を述べたか、議論がどう推移したか。
- 評決の多数意見・少数意見の内訳:何対何で有罪・無罪が決まったかなどの票数。
- 他の裁判員や裁判官の氏名・個人を特定できる情報。
- 非公開の場で知り得たプライバシー情報や事件の非公開記録。
家族や親しい知人であっても、「〇番の裁判員が最後まで無罪を主張して揉めた」といった評議の内情を漏らすことは明確な違法行為となります。自身の受け取った報酬や一般的な体験談を語ることは何ら問題ありません。

【プロの結論】司法参加と個人の生活防衛を両立させる判断基準
法学や社会心理学の観点から見ると、裁判員制度は「専門家による密室司法」を打破し、社会の常識的感覚を量刑に反映させる極めて重要な民主主義の装置です。しかし同時に、個々の生活やメンタルヘルスを守ることも同等に重要です。
もし手元に呼出状が届いた場合、参加すべきか辞退を申し出るべきか、以下の判断軸を参考にしてください。
前向きに参加をおすすめできる人
- 特別有給休暇が保障されている勤務先の人:給与の減額リスクがなく、日当も含めて経済的安定が保たれている。
- 司法手続きや社会問題に関心が高い人:法廷の一次情報に触れ、合議制の意思決定プロセスを肌で体験することは類まれな知的刺激となる。
- 業務のスケジュール調整が利きやすい人:数日間の不在を同僚やチームでカバーできる体制が整っている。
慎重に辞退を検討・申し出るべき人
- 休業損害が生活に直結する完全歩合制・日雇い労働者:日当1万円では平時の収入を大きく下回り、経済的困窮を招く恐れがある場合。
- 精神的ストレスに極度に弱い・トラウマを抱えている人:重大事件(殺人、傷害致死、性犯罪等)の証拠物・遺体写真等に触れることで心身に影響が出るリスクがある。
- 代替不可能な重大業務や介護・育児の只中にある人:無理をして出席することで家庭や事業に修復不能な損害が生じる恐れがある場合。
【裁判員 日給】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:候補者に選ばれて裁判所に行っただけでもお金はもらえますか?
A1:はい、必ず支給されます。裁判員等選任手続期日に出頭したものの、最終的に裁判員に選ばれなかった場合でも、拘束時間に応じた日当(最高8,000円以内・半日程度なら概ね2,000〜4,000円程度)と往復の交通費実費が後日指定口座に振り込まれます。
Q2:パートやアルバイトの場合、休んだシフトの給料は補償されますか?
A2:裁判所から支払われるのは所定の日当(最高1万円)のみであり、個別のアルバイト先での逸失利益(本来稼ぐはずだったシフト給与との差額)を個別に補償する仕組みはありません。そのため、日当以上の収入減が生じる場合は、経済的困窮を理由とした辞退申し立てを行うことが可能です。
Q3:裁判員の日当はいつ、どのように支払われますか?
A3:原則として、選任手続時や裁判初日に登録した本人名義の銀行口座への「口座振込」となります。裁判の全日程が終了してから概ね1〜2週間程度で、日当と交通費が合算されて一括で振り込まれます。
Q4:新幹線や特急、タクシーの交通費は全額出ますか?
A4:原則として「最も経済的かつ合理的な通常の経路」の公共交通機関(在来線・バス)運賃が支給されます。新幹線や特急料金は一定の距離基準や利用要件を満たした場合のみ認められます。タクシー代や自家用車のガソリン代・高速代は、公共交通機関が不通の地域や身体的理由等で裁判所が認めた例外的な場合を除き、支給対象外となるのが基本です。
まとめ:突然の通知に慌てないための心構えと最新ポイント
裁判員制度における日当は最高1日1万円、選任手続のみの候補者であれば最高8,000円が支給され、これに実費交通費が加算されます。会社の有給休暇制度との併用受給(二重取り)は法的に全く問題がなく、年間20万円以下の雑所得であれば原則として確定申告の負担も発生しません。
通知が届いたからといって過度に身構える必要はありません。自身の仕事や家庭の状況を冷静に見極め、正当な理由があれば遠慮なく辞退制度を活用し、参加が可能な環境であれば社会を支える貴重な一歩として前向きに向き合うことが、賢明な市民としての最適なスタンスと言えます。 (出典: 裁判員 日給(Yahoo!ニュース))